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死海での游泳

中根正和

2月中旬、イスラエルの死海(DEAD SEA)で、泳いできました。死海は、イスラエルとヨルダンの国境、海面下300mに位置する特殊な環境にあります。一年中紫外線が強く、また、湖水の蒸発が激しい。塩分が飽和状態である為か湖底や水際至る所で、塩の結晶が見られます。この特異な体験をご紹介致します。政情柄、危険ではなく、有意義な時間でした。

死海は2月と言えども、湖水浴が可能。一瞬ヒヤリと感ずるが、入ってしまえば、なんていうことはない。半砂漠の湖だから、足元は瓦礫の山で、素足は禁物。瓦礫に塩の結晶が幾重にもフジツボのようにへばりついている。珊瑚礁のように真っ白で且つ、ガラスのように角を持つ。水際は非常に危険。波風がたち猫に引っかかれたように生傷だらけだ。しかし、死海の成分は、天然のスパ。ミネラルが実に豊富。治りは早い。尚、決して目は開けてはいけない。ゴーグルは必須アイテムである。すり鉢状に深く、湖岸から2〜3m離れれば、足も湖底に触れることもない。

湖水自体は透明だが、水深の為か成分の為か深緑に美しい。無論、生物の生息できる環境ではない。肌触りは若干ヌルヌルしている。塩水というより、スパ(温泉浴)に近い。しかし、強度の塩分の為か、引き締まる。

いざ、泳ぐと全くダメ、腹這いの姿勢は実に不安定で、海老ぞってしまう。クロールも、平泳もまるで犬かき。様にならない。空中を掻いても進まない。ラッコ状態でないと安定しない。この姿勢でも、肘から手先まで、ふくらはぎから足先までが、必然的に水面上に出てしまう。海水浴でも決してあり得ない状況だ。新聞が読めるという表現に納得できる。ラッコ状態が安定するが、いくらもがいても、手足は水面上だから、悪あがきにすぎない。

今度は、潜水を試みた。平時泳で必至に掻いても、腰から足は潜らない。上半身だけ水面下にあるが、全身が水没することはなかった。これでは溺れる不安がない。

Copyright(C)1999, NAKANE Masakazu.

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