藤原充
去年に続いて第2回熱海オープンウォーターに参加した。会場に到着するなりこのニュースをお読みいただいている仲間たちに次々とお会いできた。受け付けで右肩に黒マジックで数字を書いてもらう。私の両肩にはココスクロッシングの時の数字だけが日焼けしないで残っていたので並んでいる他の人々に珍しがられた。妙な日焼けあとがめずらしい。この大会は海開きの次の日曜に開催される。まだ梅雨明けではない。天気はあまり良くない。まだスタートまで時間があるのに、悲鳴を上げながらウォームアップする人もいる。私はやめておく。
各地から集まった仲間とお話をしたり写真を撮ったりして開会・スタートを待つ。実は、今日は新しい道具の初公開だ。液晶ディジタルカメラCASIO QV-10A(3.98万円で購入)(ちなみに購入費用は私のポケットマネーです)で水泳イベントを撮影して、カメラとパソコンをコードでつないでその画像ディジタル情報をワープロソフトに取り込んで、このニュースで公開していこうという目論見なのだ。
小雨の降り始めた寒い海岸でいよいよ3200メートルのスタート。いっせいに泳ぎはじめた。バトルに巻き込まれるのが嫌な人は後ろからゆっくりスタートするとよいでしょう。冷たい。なんだか耳や頭がじーんと痛いような感覚がある。でも泳ぎはじめたら気にならない。かえっていつもよりグイグイと腕を回したくなる、そんな水温だ。
この大会は1周800メートルで四角にブイを4回回る。
それは2周目で起こった。スタート・ゴール地点の正面辺りで私は1人の男性スイマーを捉えていた。真横に並んだとき、彼の腕は予想以上に外側に伸びて私のゴーグルを叩いて、ずり下ろしてしまった。あらぁぁ、なんてことを。こんな時のために足の届かない海上でもゴーグルの脱着ができるようにしている私だ。急いで付け直そう。・・・しかし、ここは・・・浅いんですねえ。なんのことはない。特別な泳法・技術は関係なく立って直せたのだった。そして憮然としながらまた泳ぎはじめるのだった。
たしか3周目で、女性スイマーが私を追い越していった。と思うとだんだんあらぬ方向へ曲がって行って、私は大丈夫かなあと思っていると彼女もそれに気が付いたらしく急に方向修正をする。私のすぐ前を左へ右へ横切って迷惑なことこのうえない。私とちょこんと接触したあとはどこか不透明な水のなかへ溶け込んでいった。まあ、私もはじめてオープンウォーターで泳いだ92年のココス・クロッシングではそうだった。数ストロークごとに頭を正面に上げたときに愕然とした、まっすぐに泳いでいないことに気付いたときの恐怖。でもなんとか泳ぎきれるもの。いまでは平気で泳ぐけれど、あの頃のスリルいっぱいのレース出場もワクワクしててよかったなあ。
そして4周目。今日は体調が良い。あるいは水温が低いのでぐいぐい体を動かしたくなるからなのか集中力が途切れない。ますますストロークに力が入る。ぐいぐい進んでいるようだ。ラストスパートだ。ゴールが見えて来る。波打ち際で立ち上がる。よろよろしながら小走りで腕に付けたセンサー内蔵のリストバンドを計測装置に近づける。電子音がしてフィニッシュ。
ふらふらとよろける足でテントへ向かう。近くの人につられてついシャワーをあびた。それがいけなかった。冷たいよ。体が震えだした。自分ではどうにもならない。我々の教科書「マラソンスイミング」の文章が頭の中を振動する。"ハイポセーミア"(低体温症)だ。体温を上げるために筋肉の収縮でふるえを起こし、熱を生じさせる。暖まれば問題はないのだが、ひどい場合には幻覚を見たり気を失う。なかなか止まらない。からだが勝手に反応しているだけなので楽しんで観察できた。背中をこすってくれた吉田さんどうもありがとう。教科書を読み直してみると夏のドーバー海峡の水温は関東の真冬の水温だそうで、これも大変なことだ。
午後にはライフガードの競技も行われ、楽しく観戦した。
私の成績は01:00:10,126位,年齢別42位とのことだったが、こんな数字だけで判断してはオープンウォーターの魅力が表現できない。この文章を書いている7月13日の夕刊読売にプロゴルファー小林浩美さんも「数字だけで判断しないで」季節,天候,コースのセッティング,コース状態,選手の技術,精神,健康状態はいろいろ、オリンピックも金メダルの個数じゃないとあるので参考にしよう。まず、季節は海開き直後のスリルのある水温でおもしろかった。体がぐいぐい動いた。途中で集中力が途切れず最後まで持続できた自分を誉めたい。天候は雨が降ったり止んだりでちょっと残念。コースは防波堤の内側のお庭のような環境なのでスリルのかわりに安全を選択している。初級者にはおすすめ。水の美しさは残念ながら私の知っているいくつかのイベントにかなわない。しかし大温泉地なので温泉を楽しめば旅行全体では相殺してもいい。おさかなは見なかった。砂浜はきれいだった。Tシャツ,トレーナー,スイムキャップの販売・デザインも悪くない。読者の皆様とは、このニュースが盛り上がってきてから初めての再会でありそれがとても楽しかった。
では、またどこかのイベント会場でお会いしましょう。
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